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Nowhere to Hide (TV) エスケイプ/FBI証人保護プログラム

アメリカ映画 (1994)

アメリカの証人保護プログラムを全面に押し出した映画。少し古いが2016年に書かれた「12 Secrets of the Witness Protection Program(証人保護プログラムの12の秘密)」というサイトには、裏話がいろいろと書かれている。1971年に始まったこのプログラムで保護された証人と家族は2016年の時点で18000人以上、しかし、そのうち、如何なる犯罪歴もない人は僅か5%以下で、その大半は、自分の犯罪行為に対する告発を免除されることを目的に、別の重大犯罪の目撃証人となるというケースで、1995年には、アメリア西海岸のポートランドの警察署長が、東海岸のメイン州は 「プログラムの犯罪者の “はきだめ”」になったと批判している。また、やくざの殺し屋だった男が、プログラムの費用で、妻の豊胸手術、美容整形、歯科治療の費用を払わせた、という例も書かれている。この映画のように、無実の証人を救うことがプログラムの目的だと思っていたので、この実態には驚いた。逆に、プログラムの厳しい面としては、新しい家、家具、生活費を担保するのだが、就職して6ヶ月以内に自立することが期待され、永久に支払われるわけではない、とも書いてあった。このように、厳しい面があることも知らなかった。ただ、別のサイトによれば、ある家族は8年間に少なくとも7回住所を変えた。子供の1人がうっかり姿を見せた時には、家族は数時間で荷造りを余儀なくされ、プライベート・ジェットで秘密の場所に運ばれ、厳重な監視下に置かれたとあり、これは、この映画におけるサンフランシスコからバンクーバーへの水上飛行機による逃避行を思わせる。

ニューヨークの郊外の豪邸に住むサラは、9年間の結婚生活を終え、離婚に関わる協議を終え、明日、正式に離婚が成立することになっている。受け継ぐ財産は、豪邸以外に、高級車、多額の現金(総計12億円以上に毎月の生活費300万円)、夫の事業の半分に別荘、そして何よりも、10歳の息子サムの親権など、まさに “独り勝ち”。そんな幸せ一杯のサラが、サムを学校に送っていった帰り、豪邸への通路の門の前で何者かに銃撃を受ける。ケガはなかったが、サラは恐怖に怯え警察に相談するが、打つ手がないと言われてしまう。そこで、サラは都会を離れ、山の中の別荘にサムと2人で避難する。すると、ある日、そこに2人の連邦捜査官が訪ねてくる。ボスのニコラスは、前夫がアメリカの犯罪組織の中で最も危険な人物で、サラを殺す指令を出したのも前夫だと話す。そして、前夫を起訴できるような証言をしてくれれば、証人保護プログラムの対象者として母子を保護すると持ち掛ける。ニコラスは、2人を、まずサラの弟のいるサンフランシスコに連れて行き、そこで、サラのIDなどすべてを回収し、新しい名前や住所が決まったら、新しいID等を渡すと言うが、決まるのはまだ先の話で、それまではニコラス達が2人に同行して守ることになる。そして、翌日さっそくバンクーバーに向かうが、途中でギャング団の待ち伏せに遭い、危うい所で待機していた水上飛行機に乗り込んで脱出。バンクーバーでは4つ星ホテルに滞在。しばらく経ったある夜、サラはいきなりニコラスに起こされ、司法省内の情報漏洩で居場所がバレたと告げられ、列車と車を乗り継いで田舎の一軒家に連れて行かれる。そこでの滞在は長く、単調な毎日の中でサラとニコラスの間には愛情が生まれ、遂には愛し合うまでになる。そして、サラの証言のお陰で 前夫が起訴されたとのTVニュースの録画ビデオが届けられる。それを機に、一行はシアトルに移動。その時点で4ヶ月が経っていた。しかし、家族から8週間離れて警護に当たっていた部下の一人から、サラとの恋愛関係について皮肉を言われたニコラスが、その部下を殴ってしまい、プログラムの担当から外されてしまう。サラは、ニコラスのチーム全員が退去した15分後に、新しいチームがやって来ると伝えられる。しかし、ニコラスが去った後、誰も現れない。不安になったサラは、シアトルのFBIを訪れ、いったいどうなっているのか文句を言いに行くが、そこで衝撃的な事実を告げられる…

マックス・ポメランク(Max Pomeranc、1984年3月21日生まれ)の 『ボビー・フィッシャーを探して』(1993)に続く、2作目の紹介。彼は、私の大好きな子役。それは、チェスの名手としての静かな演技に惹かれたから。この名作の1年後にTV放映された本作では、マックスは端役に甘んじていて、演技の良さが封じられてしまい、とても残念だ。この翌年に公開された『Fluke(フルーク)』(1995)は、フルークという犬が主役の輪廻転生ストーリーで、マックスはまたもや端役、最後の4作目のTV映画『Journey(ジャーニー)』(1995)は、マックスらしさあ100%発揮されているが、本国でもビデオしか発売されていないし、字幕も存在しない。マックスは、この4作で映画界とはきっぱり縁を切り、ニューヨーク出身だが、カナダ1の名門マッギル大学で学士号を取得、そのあとアメリカに戻り、ハーバード大学の公共政策大学院で公共政策の修士号を取得した。2021年現在、Redesign Health〔医療改革を行う会社〕の対政府関係責任者になっている。右の写真は、37歳のマックス。

あらすじ

映画の冒頭、題名にかぶるように一軒の豪邸が映る。VHSからまともな映像が取り出せなかったので、映画のロケに使われた家をWEB上で探したのが1枚目の写真。映画はアメリカのTV映画だが、撮影はカナダ西海岸のバンクーバーで行われたとの情報をもとに、“新古典主義”、“豪邸” と掛け合わせて出てきたのが、映画で使われた建物。1914年に建てられたバンクーバー屈指の豪邸で、ダウンタウンの南南西約3キロの “The Crescent” という楕円形街区の1388番地。グーグル・ストリートビューでは、門しか見えない。オープニング・クレジットの間、この豪邸に住むサラという30代半ばの美しい女性が、30年前の “受話器のような形” の携帯電話で話している。電話の間じゅう、10歳の息子のサムが、「ママ、どこ?!」と叫んでいる。電話を早々に終え、グランドピアノの置いてある部屋に降りて行くと、サムがドラキュラの出で立ちでピアノを弾いている〔ということは、この日は10月31日のハロウィーン〕。母は、隣に座ると、弾き終わったサムに、初心者の演奏にもかかわらず 「ブラボー!」と拍手する(2枚目の写真)。「ママも弾く?」。2人で弾き始めると、母は抜群に巧い〔サムは左手だけで伴奏〕。「じゃあ、学校に行きましょ」。母は、メルセデスのSクラス(W126)で、小学校までサムを送る(3枚目の写真)。その他の生徒も何らかの仮装をしている。そこで会った他の生徒の母親(友人)に、「シャネルなんか着て、朝食デート?」と訊かれると、サラは、「弁護士に会いに。やっと終わるわ。明日、正式に独身女性になるの〔離婚が成立〕」と答える。
  
  
  

サラは、そのままUターンして自宅に戻り、電動式の門をリモコンで開ける。門が開ききらないうちに、1台の車が斜めに停車すると(1枚目の写真)、助手席から降りた男がライフルをサラに向けて撃ち(2枚目の写真)、運転席のドアガラスが粉々に割れる。車はサラの生死を確かめず、すぐに逃げ去る。場面は、豪邸の中に変わり、サラがロス巡査部長から質問を受けている(3枚目の写真)。そこで出された最初の質問は、サラの弟に服役記録があること。サラは、原因は麻薬で、弟はサンフランシスコにいると言い、関与を否定する。次の質問は夫について。サラは、明日、正式に離婚すると話す。そして、離婚の結果もらうものをロスが訊くと、①500万ドル〔現在の価値で924万ドル≒10億円〕の家、②8万ドル〔1600万円〕の車、③100万ドル〔2億円〕の現金、④15000ドル〔300万円〕の毎月生活費、⑤夫の事業の半分、⑥サムの親権、⑦アスペンの別荘、という途方もない内容。それを聞いたロスは、サラが死亡した場合、サムの親権が前夫に渡ると聞き、サラは、「彼は人殺しじゃない」と否定するが、「スニーカー1足を取り合う人たちだっている」とコメント。しかし、現段階では何もできないので、何でも疑わしいことがあれば いつでもここに電話をと、名刺を渡されただけで帰って行く。
  
  
  

打つ手がなくて怖くなったサラは、サムを連れてアスペンの別荘に行く。この映画は、アメリカ映画なので、サラの家(ロケ地はバンクーバー)も、アスペンの別荘も、アメリカ国内のどこかという設定。ただ、自宅は、10月31日で雪はなかったが、このアスペンには1・2枚目の写真のようにかなりの積雪がある。夜、ベッドの中で、サムが、「ねえママ、言ってたよね、パパのこと… 昔と違って、感じが…」。「ロマンティックじゃない」。「どうして変わっちゃったの?」。「出会った時は、今とは違った人間だった。結婚して ママは変わった。成長したんだと思う。パパも変わったわ」。「だから、愛せないの?」。「結婚した時みたいにはね。そんなにうまくはいかないものなの。でも、あなたに対する愛は別よ。永遠に変わらないから」(3枚目の写真)。
  
  
  

その夜遅く、ロス巡査部長から電話が入り、事件の担当が連邦捜査官に決まり、司法省のケヴィン・ニコラスが明日、そちらに行くと伝える(1枚目の写真)。サラが、急な変化の原因を尋ねても、「全く分かりません〔I have no idea〕」「ニコラス捜査官に訊いて下さい」と言うだけ。そして、翌日、玄関のリングの音でサラがドアを開けると、そこには、ニコラスと、もう1人の捜査官が立っている。サラは、すぐ入るよう言うが、ニコラスはID証をしっかり確認するよう要求する(2枚目の写真)。サラは、あまりのくどさに嫌気がさし、「私の家で指図しないで」と言い、2人を中に入れる。玄関の近くで遊んでいたサムは、「ママ、その人たち、誰なの?」と訊く。ニコラスが、「警察の者だ」と言うと、母と違い、積極的にバッジを見たがる(3枚目の写真)。サラは、2人との話が終わるまで、サムを2階に行かせる。
  
  
  

サラは ニコラスに、ロスが外された理由を訊くが、彼はそれには答えず、前夫の事業について強権的に質問する。その理由は、①離婚しているので、サラの証言は証拠になる、②サラの前夫は、この国の組織犯罪で 最も危険で重要な人物。特に、②は サラにとっては耳を疑うような話で、まさに衝撃だった。ニコラスは、裁判所命令で盗聴した各種の電話の会話内容をサラに読んで聞かせ、その中で、前夫が麻薬で儲けた不浄な金を 「釣りに行く」と言ってよく出かけたマイアミでマネーロンダリングしていたことや、サラを殺す指令までしていたことを明らかにする。ニコラスは、サラが、前主人に行動について、名前、日付、場所を覚えていれば、それがアリバイ崩しに役立ち、起訴に持ち込めるので、重大な犯罪の証言者に対する「証人保護プログラム〔Federal Witness Protection Program〕」を適用できると話す(1枚目の写真)。これにより、サラとサムには新しい名前と住む場所が提供され、それに伴って、新しい社会保障番号〔social security number〕、出生証明書、運転免許証の交付や、学校の記録の変更なども行われる。それだけ話した後で、ニコラスともう一人は、さっさと別荘から出て行く。すぐに守ってくれると思っていたサラは、「嘘つき!」と叫んで別荘から飛び出てくるが(2枚目の写真)、ニコラスは、プログラムに該当するかどうかの決定権はワシントンにあるので、それまで身寄りの所で待つよう勧める。しかし、サラにはロクデナシの弟しかいない。それを聞いたニコラスは、サラが可哀想になり、上層部と強い関係があることから、正式な認可が下りるまで、サラを弟の所に連れて行くことにする。次のシーンは、いきなりどこかの空港のロビー。サラに連れられたサムは、「バカンスには行きたいけど、サンフランシスコは嫌だ。叔父さんは、メチャクチャな人だよ」と反対する(3枚目の写真)。サラがサムを待合室に行かせ、カウンターで切符を買おうとすると、そこにニコラスが来て、「ニコラス夫妻です」と、サラが名前を言うのを防ぎ、さらに、サラが出そうとしたクレジットカードを「追跡されるから」と引っ込めさせ、自分の現金で払う。
  
  
  

場面はサンフランシスコの中華街の外れのうら寂しい地区。3人が車を降り、狭い廊下の角にあるサラの弟の部屋のドアをノックする。ドアを開けた弟は、来る前に電話するのが礼儀だと言い、「中に入れてよ」の頼みにも、楽しんでいる途中だからと拒否。そこに、ニコラスが顔を出しID証を見せる(1枚目の写真)。それを見た弟は いきなりドアを閉めヤクをつかむとトイレに駆け込んで処分する。部屋に入ったサラが、トイレのドアを叩いて、捜査官の来た目的を話すと、弟は、大事なヤクを水洗トイレに流してしまったことを悔やむ。部屋の中にいた若い女性が出て行くと、サムはニコラスに、「あの人、何してたの?」と訊き、ニコラスに 「知りたがり屋だな」と言われてしまう(2枚目の写真)。サム:「ママは褒めてくれるよ」。でも、ニコラスは質問に答えない。サラは、事情を話して匿ってくれるよう弟に頼むが、「できない」「みんな、出てってくれ」と断られる。しかし、ニコラスが、「いつでもムショに放り込めるんだぞ」と静かに言うと、その晩は、ソファで眠らせてくれる。その夜、ニコラスは、どこかに電話をかけ、「明日の昼には国境を越えたい」と話す。翌朝、出発前に、ニコラスは、サラのクレジットカード全部、免許証、社会保障番号、小切手など名前の書いてあるものを全て、ポリ袋に入れさせる(3枚目の写真、矢印)。そして、新しい身元が決まったら、新しいクレジットカード、新しい社会保障番号を発行すると話す。「いつ、家に帰れるの?」。「状況が分かっておられないようですな。あなたは、あの家には二度と戻れません。生き残るためには、もはや、サラとサムは存在しないのです」。
  
  
  

昼前、護衛の2台の車に挟まれ、3台の車が中華街を出発する(1枚目の写真)。車列は、ゴールデン・ゲート・ブリッジを渡る。車列がかなりの田舎に来た時、心配になったサラが、「これって、空港への道じゃないわね。どこへ行くの?」と訊くと、「民間空港に行くのは危険過ぎるので、水上飛行機を待たせてあります」と答える。途中の道に、1台のトラックがエンコして停まっていて、作業していた男が手を振る。仲間かと思って見ていたら、車列の真ん中の助手席に乗っていたニコラスが、「マイク1から2へ、停まるな」と指示する。先頭の車がトラックに近づくと、荷台に隠れていた3人が姿を見せ、銃を乱射し始める(2枚目の写真)。先頭の車は道路脇に突っ込み、ニコラス達の車はリヤ・ウィンドウが粉々になった以外は無事通過、しかし、トラックが後を追いかけてくる。後尾の車が進行を邪魔している間に、ニコラス達の車は桟橋の先端まで行き、その先に係留してある水上飛行機に乗り込む(3枚目の写真)。
  
  
  

水上飛行機はバンクーバーに着水する(1枚目の写真)〔何度も断るが、冒頭の豪邸はたまたまロケ地がバンクーバーだっただけで、映画の設定はニューヨークの郊外、これで初めてバンクーバーに到着した〕。一行が泊ったのはホテル・バンクーバー〔現在は、フェアモント ホテル バンクーバー。1939年にオープンした由緒あるホテル〕。そこでサラがさせられたのは、膨大なサイン(2枚目の写真)。ニコラスは その趣旨を説明するが、今までこうした事務的なことは すべて会計士に任せっきりにしてきたサラにとっては 煩わしいばかり。ニコラス:「こうやって立件する〔build a case〕んです」。サラ:「違う。こうやって気が狂うんだわ」。その間、サムは、気楽にTVを見て楽しんでいる(3枚目の写真)。
  
  
  

数日後か 数週間後かは不明だが、ある夜。いきなり寝室のドアが開き、ニコラスが飛び込んでくると、サラを起こし 「居場所がバレた」と、緊急の出立を要求する。原因は、司法省の誰かが取り込まれ、今いる場所を教えてしまったこと。3人は部屋から出ると(1枚目の写真)、エレベーターを使わずに階段で下り、一般客に会わないよう、洗濯室を抜けて外に出ようとする。途中で警備員に呼び止められると、ニコラスは拳銃を構え 「司法省の人間だ」と言い、拳銃をしまってID証を見せ、「私たちは、いなかった〔We didn’t exist〕」と暗示し(2枚目の写真、矢印)、そのまま従業員用の出口から街路に出る。3人は、待っていた車に乗り込み(3枚目の写真)、もう1台の車とともに こっそりと立ち去る。
  
  
  

車はバンクーバーにあるパシフィック・セントラル駅〔現在名〕に到着〔ホテルを出た時は真夜中だったのに、僅か2.2キロしか離れていない駅に着いた時は、朝になっている〕。そこで3人が乗ったのは、Royal Hudson 2860と呼ばれる蒸気機関車が牽く最後尾の客車。蒸気機関車は雪に覆われた渓流沿いの単線を走る(1枚目の写真)。あんまりピンボケでみすぼらしいので、ネット上で見つけた 似たような場所を走る雄姿を2枚目に示す。最後尾の特別車両では、ソファに横になっていたサムが置き上がると(3枚目の写真)、母に 「ママ、泣かないで」と話しかける。「いいから、寝なさい」。「僕なら OKだよ」。「そうじゃないでしょ。学校に行ってるハズよ。成績が心配」。「頑張るよ」。その言葉を聞いて 母は思わず吹き出す。「どうしたの?」(4枚目の写真)。「以前、私が あなたの世話をするわ、って言ったの思い出して」。「僕なら大丈夫だよ」。
  
  
  
  

列車は途中の駅(?)で停車し、3人が降りると、そこには、顔馴染みのもう1人の捜査官が車で待っていた(1枚目の写真)。この車が 最後に着いた先は、雪のない田園地帯の真ん中にある一軒家(2枚目の写真)。「ここは、何なの?」。「安全な家です。私が自分で手配しました」。しばらくして、ニコラスが電話をしている。そこでは、①誰が情報を漏らしたか分かるまで、現場の判断で動く、②応援は不要、③連絡はこちらからだけ、と言い電話を切る。一緒に滞在する捜査官に 「いつまでここに?」と訊かれると、ニコラスは 「分からん」とだけ答える。長期戦を覚悟したニコラスは、親しくなったサムと一緒にピアノを弾き、それを見たサラが微笑む。2人は、最初から家にいた犬と一緒に遊んだり、納屋の中で羽ばたいている鳥を見たり、父と子のように親しさを増していく。
  
  
  

そして、ある日、ニコラスとサラが一緒に外を散歩していた時、ニコラスは、サラに最初の頃 厳しく接したことを謝り、サラは ニコラスの両親について、更に、結婚しているかどうか訊く〔ニコラスは未婚〕。そのあと、ニコラスが、サラの立場を 「他の誰かになるのは、辛いことだね」と同情すると、サラは 「私は、9年間やってきた」と言う。それを聞いたニコラスは、「サラ、きっと良くなるから」と言い、2人は自然に顔を近づけ合い、遂にキスする(1枚目の写真)。その場は、ニコラスが 「こんなことしちゃ いけなかった」と言って、一人で家に戻る。しかし、その夜、「午後のことは済まなかった」「個人的な関与は許されないんだ」と謝るが、サラはそんなニコラスを誘うように体を動かす。そして、もう一度ディープ・キス。そして、当然の結果としてニコラスのベッドへ。事が済み、サラがニコラスの裸体にもたれて甘えていると、急にドアが開き、サムが 「ママ」と言いながら入ってくる(2枚目の写真)。予想外のものを見てしまったサムは、母とサムの寝室に逃げ返る。サラは すぐ後を追い、ベッドに入って抱き締めて 「夢を見たの?」と訊く。「うん。ベルーガ〔白い小型のクジラ〕と一緒に泳いでたら、突然 サメになっちゃった。僕を追いかけてくるから、必死に泳いだけど 逃げられなかった。ママ助けてって呼んだのに、どこにいたの?」。「ここにいるじゃない」。「ケヴィンのベッドで何してたの?」(3枚目の写真)。この決定的な質問に、サラは、「ママも怖くなって、誰かにハグして欲しくなったの」と誤魔化す。
  
  
  

翌日、サムが窓から外を覗いている。母が部屋に入って来て、「何か食べる?」と訊いても、「大丈夫?」と訊いても返事をしない。心配になった母は、近くに寄って、「どうしたの?」と尋ねる。「パパに会いたい。話したいよ、ママ。電話するだけ」(1枚目の写真)。「できないの」。「電話番号知ってる。電話して 迎えに来てもらう」。「聞いて。私たちを傷つけようとしてる奴らは、パパのために働いてるの」。「そんなの嘘だ」。「あのね、パパは今、ちゃんと考えられないの。病気なのよ」。サムは、それも否定し、部屋から飛び出て行く。一方、ニコラスのところに、いつもの捜査官が郵便物を届けに来る。それは、ニュースを録画したビデオテープだった。レポーターは、裁判所の前で、「ジョン・ブレイク〔サラの前夫〕が、今朝、連邦裁判所にマネーロンダリングの疑いで起訴されました。弁護士は起訴事実を否定しています。彼の妻と息子が行方不明になって3ヶ月経ちます〔そんなに時間が経過していた!〕。ブレイクは100万ドルで保釈されました」と話す。サラは、保釈されたことに驚くが、ニコラスは計画通りだと話す。しかし、前夫による追跡は激しくなることが予想されるので、さらに引っ越すことになる。荷物が車に積み込まれ、母が姿を見せないサムを捜して納屋に入ってくる(2枚目の写真)。サムは車に向かう。一行が着いた新しい避難先はシアトル。車が街角に停車し、荷物を下ろす(3枚目の写真)。
  
  
  

その夜、シアトルのマンションの一室で、サラは、ニコラスに対し不満を並べる。起訴されたのに、家や財産が自分のものになっていないことに気付いたのだ(1枚目の写真)。ニコラスは、サラが嫌がって全部の書類にサインをしなかったことが原因だと釈明し、家はニューヨーク州によって取り上げられたと話す。次のシーンは、何日後か分からないが、ニコラスといつも一緒に警護に当たっていた捜査官が、①こんなに長期の任務だと聞いてなかった、②8週間家族と会っていない、とニコラスに文句を言う。そして、「あんたはいいさ、毎晩お楽しみで」と言い、ニコラスに殴られる。この殴ったことが問題視される。それから、また数日が経ち、夜、サラがベッドで横になったサムの横に行き、「愛してるわ、サム」と言っても、サムは何も言わない(2枚目の写真)。そして、真夜中。ニコラスに電話がかかってきて、解任が伝えられる(3枚目の写真)。ニコラスは、「2時間後に 引継ぎ担当がこのビルまで来る。俺が下まで行き、ファイルを渡す。そしたら、15分後に、新しいチームが ここまで上がって来て、君たちを新しい場所に連れて行く」と サラに話す。サラが、「どこに連れて行かれるの?」と訊いても、交替後の情報は 一切教えてもらえないと打ち明ける。
  
  
  

ニコラスは、サラに 「あと15分で来る。彼らの言うことに従うんだ」と言い、サムには 「ママの世話を頼むぞ」と言って(1枚目の写真)、頭を撫でる。思わず抱き着いたサラに、「省内に友達がいる。必ず見つけ出すよ」と、いつの日かの再会を誓う。そして、マンションを出て行く。サムは本を読み始める。サラは、窓の外ばかり見ている。時間が経過し、サムは お城と騎士を使って遊び出す(2枚目の写真)。さらに時間が経過。サラは、時計を見ながら窓の外をイライラしながら見る(3枚目の写真)。恐らく1時間以上は待っていたに違いないが、交代要員の現われる兆しは全くない。
  
  
  

しびれを切らしたサラは、サムを連れてマンションを出て行く(1枚目の写真)。タクシーを拾い、教会が運営する施設にサムを連れて行く。映画では紹介されないが、恐らくシスターとの交渉が成立し、サムに「シスターと一緒にいれば安全よ」と別れの言葉をかける(2枚目の写真)。映画の設定では、ここはシアトルだが、ロケに使われた建物は、バンクーバーにあるSt.Luke’s Courtと呼ばれる歴史的建造物(3枚目の写真)。サムが、「ママ、何をするの?」と訊くと、母は 「すぐ戻るわ」としか答えない。「もしママに何か起きたら、僕はどうなるの?」(4枚目の写真)。「何も起きないわ」。
  
  
  
  

サムが向かった先はシアトルのFBI〔交替要員が来ないので、どうなっているのか訊きに行った〕。ロケ地は、バンクーバーの旧裁判所〔現・美術館〕(1枚目の写真)。サラは、対応に出た女性の連邦捜査官に 事情を話す。彼女は、詳細を調べた上で、サラを自分の執務室に呼ぶ(2枚目の写真)。そして、最初に訊いたことは、「息子さんは今どこですか?」だった。「なぜ、何か問題でも? 安全な場所よ」。彼女は、サラに、ニューヨーク市警、FBI、司法省に問い合わせた結果、サラの元夫が起訴された事実はないと教える。サラが、TVで見たと答えると、「どの局?」と訊かれる。「郵便で届いたビデオだったわ」。それを皮切りに、連邦捜査官は、驚くべき事実を次々と並べていく(3枚目の写真)。①ニューヨーク市警にロス巡査部長なる者はいない。②証人保護プログラムの担当は連邦捜査官ではなく連邦保安官。③ケヴィン・ニコラスなる連邦捜査官は存在しない、④司法省がサラ・ブレイクを証人保護プログラムの対象としたという記録は一切ない、⑤サラは離婚調停に反して息子と一緒に4ヶ月間姿を消した。⑥それは児童誘拐で逮捕される罪に該当する。サラは、弁護士を呼ぶ権利を告げられ、一時的に拘置される。
  
  
  

一晩拘置された後でサラは謁見室に呼び出され、再び連邦捜査官と向き合う。彼女は、「あなたの言ったこと、すべて信じるわ」と言ってくれる。さらに、「あなたを助けたい。あなたの話を14時間かけて調査した」と告げた後に、児童誘拐の件は不起訴にしたと言う。サラが最初に口にしたのは、お礼ではなく、「なぜ、彼はこんなことをしたの?」だった。「お金よ。あなたのすべての財産」。そう答えた後で、彼女は、サラの全資産は、サラ名義で彼らが作った口座に移され、そこからさらにスイスに移されたと話す。サラがサインさせられた書類は、家、車、別荘の所有者を変更したり、売り払うための書類だった。4ヶ月間の航空券やホテル代はサラのクレジットカードで支払われた。サラは、サムが心配になり、解放されるとすぐ、教会の施設にサムを迎えに行く。1日ぶりで会った母が、「大丈夫だった?」と訊くと、「サイテー」と答える。「何があったの?」(2枚目の写真)。「バカげた歌を歌わされ、マッシュルームのピザしかなかった。二度とこんなトコに預けないで」(3枚目の写真)。サラは、息子を抱きしめ、二度としないと誓い、「愛してるわ」とキスする。「僕もだよ、ママ」。
  
  
  

サラとサムは連邦捜査官に会いに行き、ニコラスが逮捕歴のある犯罪者の中にいないか、写真をチェックする(1枚目の写真)。最初に反応したのはサム。「ケヴィンだ」と言う。その時の写真が2枚目の写真。一見、かなり違うようだが、子供の直感の方が、ニコラスを愛してしまったサラより、見抜くのが早かった。
  
  

資料を取り寄せた連邦捜査官は、「ライル・ウィルカーソン、ケヴィン・ニコラスとしても知られる」。それを見て、彼女は、やったとばかりニッコリする。犯罪歴は、小切手偽造、詐欺など典型的なイカサマ師。そして、1989~91年の間、チノ刑務所〔カリフォリニア州〕の二人房に収監。サラは、弟と一緒だったと確信する。ニコラスは警察に呼び出され、マジックミラーの付いた部屋で取り調べを受ける。その一部始終を、サラがマジックミラーの反対側で見ている。ニコラスは、サラと一緒だったことは認めたが、ホテルは夫婦としてチェックインするなど 愛人関係だったと主張。サムが、愛し合っている場を目撃しているハズだとも言う。知り合ったきっかけは、刑務所でサラの弟と親しくなって、紹介されたこと。付き合っている期間は1年と拡大。彼がずるいのは、事実と嘘を巧みに混ぜ、サラのお金をスイスに移したような “現実の証拠” については、サラの ”凄腕” に驚いたフリをする。ホテル・バンクーバーの洗濯室を抜ける時に警備員に「司法省の人間」と言ったことを指摘されると、ホテルの出費がかさんだので、サラに逃げ出そうと誘われ、逃げる途中で呼び止められたので警察のフリをした、と巧みな嘘を重ねる(1枚目の写真)。ニコラスのあまりの無情さと、そんな男を信じて体まで与えてしまった自分の愚かさに絶望し、サラは泣き崩れる。尋問が終わり、連邦捜査官の執務室に行ったサラは、ニコラスを逮捕することは不可能だと告げられる。①どの書類にも、ニコラスの名前が出て来ない。②サラのお金は、スイスに移される前、一旦はサラの口座に入っているからだ。彼女は、証拠が必要だと強くサラに示唆する。
  
  

サラは、映画の冒頭で出てきた白亜の豪邸に、夜入って行く(1枚目の写真)。そこに住んでいるのは、前夫。中に強引に入って来たサラに、前夫は、「何しに来た?」と冷たく訊く。「君に話す権利はない。私の息子を拐(かどわ)かした」。「お願い 少し話させて。あなたしか頼れる人がいないの。数分でいいわ」。「5分やる」。サラは、「変な話だけど、あなたが私を殺そうとしてると思ったの。男が私の所に来て、あなたがマフィア〔mob〕で、私が殺されると言った。だからサムと逃げたの」と弁解する。「僕が殺し屋だと思ったからだと? それが君の謝り方か?」。サラは、男のやったことを話して騙されたことを強調するが、前夫は、「違う。君は信じたいことを信じた。当然の報いだ」と反論する。サラは、「助けてちょうだい。お願い…」と言うと、前夫の前に跪いて泣き出す。「私には誰もいない。私には何もない。あの男が私を破滅させた。だから… お願いだから聞いて」。「聞いてる」。「結婚をダメにしたのは私よね。あなたには責任もないし、奴らの仲間でもない。でも、奴らを知ってる」。そう言うと、ニコラスから聞いた前夫の部下の男の名前をあげる。「何が望みだ?」。「正義よ」(2枚目の写真)「25000ドル持ってる。奴らには手を触れさせなかった。全部あなたにあげるから、どうか奴らに会わせて」。「君は大バカ者だ」。そう言うと、前夫はサラにキスし、「君は、僕の人生で会った一番バカなスベタだと知ってたか? 君のアホな弟が、信用詐欺なんかやれると思ったのか? 考えてみろ。そうだ、その通りだ。僕の金、僕の家、僕の事業の半分、僕の子供を 自分のものにできると思ったのか?」(3枚目の写真)「サラ、みんな僕がやったのさ。なのに、君は僕の家にやって来た。自分をよく見てみろ。何てバカなんだ。5分が過ぎた。終わりだ」。
  
  
  

豪邸から出てきたサラは、懐に隠していた音声を送信する装置を取り出し、にんまりする(1枚目の写真、矢印)。サラが画面から消えると、すぐに2台のパトカーが乗り付け、連邦捜査官が 「ジョナサン・ブレイク、FBIです。逮捕します」と言う。「なぜ?」。連邦捜査官は罪名を多々述べる。「ジョークでしょ」。「罪を認めた会話を録音しています」。「弁護士を呼ぶ」。「できません。同行願います」(2枚目の写真)。映画の最後は、ニューヨークに戻ったサラとサムが仲良く公園を歩くシーンで終わる。
  
  
  

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